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平面 具体絵画

具体絵画について

1977-81年にかけて制作した「荒れた大地」、「ブルーの色面」、あるいは「ステンレスの金属板」などで構成する断片(モンタージュ)シリーズ以後、私の関心事は「物質」と「行為」と「場所性」へと向かい、空間造形(インスタレーション)の発表と併行して絵画表現の可能性を模索してきました。それは抽象や具象というこれまでの表現の概念とは異なる新しい絵画の方向性を求めるものでした。つまり、絵画を成立させる重要な要素として物質性を重視することで、より直接的な表現とイリュージョンの可能性を探求する作業だったのかもしれません。

そういう表現への欲求から、1989年に岩国市徴古館で発表した「木調への眼差し」という一連の作品を制作しました。その後、絵画における物質性への追求は、木を削り、記号や描かれたドローイングの線、貼り付けられた金属、モルタルなどが錯綜するミクストメディアの作品へと発展してきました。この一連の作品を私は「具体絵画」と名づけています。

このように「具体絵画」はイリュージョンを否定するものではありませんが、描かれたものとは異なる具体的な物質性を絵画の極めて重要な構成要素とする独特な考え方に基づいているのです。

 

​平面 変容と生成

平面 シュールから断片構成

 

断片シリーズについて

私の作品に於いて一つの要素となっている青・原野・壁等々について具体性はない。それらは極めて個的な観念の断片として、比較的アカデミックなマチエール(素材)ででっち上げられたものにすぎない。精神的所産という美名のもとに制作され、かつて否定された欺瞞した化物である。しかし、私はマチエール(素材)を一つの物質としてみている。平面的次元に於ける断片的構成の域において、行為自体がマチエールや観念的要素と等価に提示されている側面を持っている。

このように私の作品が行為性を含む断片的な三重構造により成り立ち、単に個的なレベルに於ける観念の対象化でないことは今回の発表で明白になるだろう。そしてその構成的要素は行為とものの関係性において今もなお私の仕事の主流となって展開されている。

 

立体 交差する時間と空間

 

立体 変容と生成

 

立体 存在と場面

 

ドローイングインスタレーション

ドローイングインスタレーションは、ここ10数年にわたって絵画表現の可能性について考えてきた一連の仕事の中で、偶然とも必然ともいえる結果として発見されたものです。

私はこれまで「具体絵画」と称して、物質(素材)が表現目的の手段として扱われるのではなく、物質のあり方それ自体を色彩やフォルムと等しく絵画の重要な構成要素とする一連の作品を制作してきました。ここでは行為と物質がもたらす一回性の出来事さえも絵画を成立させる重要な要素として捉え、作為的な感性によって空間へと展開されています。

いうまでもなく、そのことによって生成される新しい意味と存在の可能性をリアルな知覚的世界として位置づけ、形而上学的な意味を問いかける主知的な営為と考えてきたのです。さらに、その表現形式のあり方は平面的な二次元の世界から室内空間(場所)を構成する三次元的な世界へとその機能性を拡張し、ドローイングインスタレーションともいうべき様式へと変容させ意識化されてきたとも云えます。

私にとってもはや絵画は多元的な空間へと自在に移ろうイリュージョンの世界へと変容してきたと云うべきかもしれません。それは身体として、あるいは存在として、覚知されるべき対象として見えかくれするもの。換言すれば、世界を包み込む現存(リアルな世界)への希求の現われというべきかも知れないのです。

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