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里山アートプロジェクト2010プレ企画

路地プロジェクト里山

 

2009年4月16日-5月16日

島根県吉賀町エコビレッジかきのきむら&草の庭

神の国島根県の西南部に位置する中山間地域吉賀町(旧六日市町)のはずれにあるこの屋敷(草の庭)に来るようになって一年がすぎた。この山里に暮らした多くの人びとの生活の営みは、米作りを中心としたものであり、土をつくるための治水と緑(森林)を守ることだった。そのための知恵と工夫が、独特の水文化や里山の農耕文化として自然の美しさとともに受継がれてきた。

今では、過疎化が進み里山の暮らしのようすも変わった。一般道路だけでなく高速道路が整備され都市部との流通も交通も便利になった。農作業も機械化が進み家畜のほとんどは居なくなり山を守る人々も少なくなってきた。だが、何処となく懐かしさと親しみがこみ上げてくるのは何故だろう。

それは恐らく、閉ざされた集落特有の濃密な人間関係や自然との交わりを原体験とする私自身の過去の記憶が、この山里の気配と共時的に響きあう何かを感じるからかもしれない。また、作家中上健次の世界にふれ中上文学の壮大な宇宙観と同時に、現世をも踏みこえて縦横無尽に駆け巡ることを可能にしたあの“中本の一統”の「路地」を想起させるからだろうか。

この屋敷には、「過去と現在」「日常と非日常」、そして「生活と芸術」「場所と人々」をダイナミックに交流する交通の場としての力がある。それ故に、すでに芸術的な要素をそなえているといっていい。

必然的に私はこの場所性を強く意識し、イルミネーションと衣服を使った虚飾の空間を措呈することで、この場のもつ潜在的な力を引き出してみたいと思ったのだ。私はそうすることで、この里山の自然とここに暮らした人々の存在をよりいっそう顕在化することで、私自身と現在をあらためて確認したいと願っているのかもしれない。

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